ちょっといい話し
長谷川正徳さんのちょっといいお話しを紹介します。私がなぜこのお話しを載せたかといいますと、自分の亡くなった祖母を思い出すからです。祖母は、毎朝必ず新聞をすみからすみまで読むのが日課でした。「字は書けないけれど、読めない字はないのよ」とよく言っていました。年をとって腰が曲がってからも、朝から夜まで畑仕事をしていた働き者のおばあちゃんが大好きでした。自分のことは気にせず、いつも人の心配ばかり。頭が下がります・・といっても今はいませんが・・。
【おばあちゃんの読書】 長谷川正徳
『問題や、悩みを抱えた時、もうどうにでもなれというような、投げやりな気持ちになったことはありませんか、この世に生を受け、健康に暮らしてゆけることを、当たり前のことと思い、日々を無駄に過ごしていることはないでしょうか。
ある日、祖母の部屋にゆきますと、祖母は手帳に細い字で何かを書き込んでいます。「おばあちゃん、何書いてるの」と尋ねますと、祖母はにっこり笑いながら、「もう年をとって、せっかくよい物を読んでも忘れてしまうから、感動したことや心に残った文章や、そうそう、もちろんあなたに聞かせたいことなどこうして書いているのよ」と見せてくれました。そこには、ほんのちょっとしたことが、美しい旋律のように綴られているのです。
祖母は今年、86歳になります。それでも、これからが勉強だと言うのです。私は祖母の言葉に脱帽してしまいました。
「本を読むことはおばあちゃんの夢だったの。それはね、私は不器用な人間で、何をするのも“ぐず”で遅いし、気がきかなくてね。小さい頃から本が好きで、お裁縫も家事も怠けてちゃんとしなかったから、お嫁にいってからとても苦労したの。だから結婚して四人の子供が一人前になるまでは、一切本を読まないで主婦としてがんばろうと心に決めたの。もっと賢く生きれば、本を読みながら家庭の切り盛りも上手くできたかもしれない。でも私には、それが精一杯だったの」と遠い日を思い出していました。
私はそれを聞いたとき「この恵まれたか環境をありがたく思い、その時々を精一杯大切に生きよう」と心から思いました。』